「『知』を共有し、地域を強くする」
会津美里町で、インターネットによる古本の販売をしている「古書 会津野」の長谷川洋一さん。
倉庫にある本の数はなんと約5万冊。
「書店の数が減り、ネットで本を買うことが増えてきた」
「もしかして、自分が読んだ本をネットで売れるんじゃないか?」
と、自分で読んだ本をネットで販売したのがはじまり。
「読書をしては売り、その資金でまた本を手に入れる」
そうやって、徐々に販売する量が増えていった。
ある日、長谷川さんが友人から本の販売を託されたとき、
「それなら、古本屋をやってみよう」
と、はじめたのが「古書 会津野」だ。
長谷川さんが創業時、どんな特色の古本屋にしようと迷っていた際に
目をつけたのが「新書」である。
10数年前、日本には文庫専門の古本屋は3件ほどあったものの、新書専門の古本屋は存在していなかった。
「新書専門店に挑戦してみよう」
と、積極的に新書を集めはじめた。
新書は特定のテーマに焦点をあてて掘り下げるもの。
お客さまが探している情報や知識を、映画のようなちょうど良い時間で得られるというのが新書の魅力である。
結果として、昨年の会津ブックフェアでは、多くのお客様に新書を手にとっていただき、大きな反響を得られた。
長谷川さんは「新書を選んだ道は間違っていなかった」
と確信を持つことができました。
「古本屋の壁」
古本屋という仕事は、読者が読んだ後に不要となった本を集め販売をする。
だから、地域の人々から本を集め、その本の買取りを行う。
地域のお客様は、期待を込め、
「どのくらいで買い取ってもらえる?」
と言う。
査定をして、
「この本はこの買取り価格になります」
このとき、お互いが納得するような額にならないことが多いのが、長谷川さんの悩みでした。
長谷川さんは、お母さまに付き添い、東京の「がんセンター」に行く機会がありました。
待合室の一角には本棚があり、長い待ち時間に読書をする人々の姿が見られます。
その本棚は、長野県の古本屋「株式会社バリューブックス」が提供していました。
バリューブックスでは、お客様から集めた書籍やゲームなどの買取り相当額を、「がんの研究」「がん医療の推進」のために寄付をする活動をしていました。
その結果、
①本を提供するお客様は、がん医療の推進に貢献することができる。
②古本屋は適正な価格で買取りができる。
③病院は善意の寄付を受け取り、医療向上のための資金として活用できる。
このとき長谷川さんは、「WIN-WIN-WIN」の状態になっていることに気づく。
この素晴らしい仕組みを、どうにか地域に応用できないかと模索。
そこで辿り着いたのが、
「古本募金」だ。
地域から本を集め、買取相当額をこども食堂に寄付する仕組みとした。
はじめてみると、
①本を提供なさるお客様は、地域に貢献していることを実感できる。
②長谷川さんも感謝して本を受け取ることができる。
③こども食堂にとり、貴重な資金源になっている。
「三方得な仕組みがつくれてよかった」
「地域の人から本を集め、その『知』を必要とする人々に売り渡す」
「『知』の橋渡し」
「それが地域の学びになり、地域を強くする」
会津では、古本屋がほとんど姿を消し、書籍を求める場所が限られてきています。
この課題を解決するため、新しい形態の古本屋、例えば移動式の本屋を検討している。
古本屋の存在の価値を、多くの人々に再認識してもらいたいと考えています。
「この機会に地域の方々に多くの本に触れていただき、本からの『知』の共有を強めていきたい」
と、会津ブックフェアに込める期待を話されます。
会津ブックフェアには、好評だった新書はもちろんのこと、会津の郷土書籍も棚に並べる予定です。
「古書 会津野」では、店頭での本の販売のほか、倉庫の見学にも応じています。
ご希望の方には、事前にご連絡をいただき対応をしています。
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古書 会津野
住所 福島県大沼郡会津美里町寺崎柿屋敷88
電話番号 0242-55-1020